December 2020
December 06, 2020
December 04, 2020
黄ぶな 歌詞
「黄ぶな」
作詞作曲:関口由紀
むかしむかし 宇都宮の地で
はやりやまいが人々を苦しめていた
やまいは人を選ばない
はたらく者 なまける者
おごれる者 へつらう者
次から次へ 倒れて行く
病気にあえぐ我が子を救いたく
一人の男がまちへでた
お医者さんは足りない治療は見つからない
政治もおかしくなり まちじゅう 大混乱
あそこの井戸の水がやまいに効くと聞けば
たとえ泥水あろうと 桶をかかえた人が群がる
病魔は異国からやってきたと 誰かが一言 口にすれば
人々はこぞって異国の民をつるしあげ
己の不安を打ち砕くように
ここぞとばかりに叩きのめす
なんと愚かであろうか よどんだまちを
男は軽蔑のまなざしで眺めていた
すると ゴホゴホ 音がした
やせ細った老婆が咳をしてる
もしかしたら はやりやまいか
うつされては かなわない
自分が倒れてしまえば我が子を守れない
男はサッと老婆から離れた
それを見ていた誰かも老婆を避けた
すると次々 周囲の人も
怪訝な視線を老婆に向けはじめた
どうも あいつは病人らしい
まちに やまいを ばらまきに来たらしい
老婆はあわてた
ちがう ちがう わたしは ただ
熱にうなされている息子のため
薬はないかと探しに来ただけ
すると 顔も見せずに 誰かが大声で叫んだ
ソイツはおそらく病魔の遣いだ
容赦をしないでたたきのめせ
人々は老婆にむらがり
殴る 蹴る いきいきと罵る
立ちつくす男の耳に うめき声が響く
自分のささいな行動が
大変な事態を引き起こしている
助けなければ
けれど そうすれば 自分が標的になる
我が子が待っている
男は逃げ出した
途端 何かとぶつかった
目の前で尻もちをついたのは幼子
その すんだ瞳にうつる自分
なんとおろかであろうか
男は引き返した
老婆をかばい 殴られ 蹴られ
ひたすらに我が子を思った
やがて人々は 次の獲物を見つけたのか
何事もなかったように その場を去って行った
いつの間にか 老婆はいなくて
男はのろのろ 歩き出した
気付けば かたわらに
ひざしを浮かべた 川が流れていた
未知なる敵はひどく恐ろしい
命だけでなく 理性も秩序も
当たり前に 過ごした日々も
人との絆もうばって行く
男は傷を洗おうと 水の流れに手を浸す
赤い血の色が滲んでく 夏草色の風が吹く
踏みつけられて汚れた頬を流れる 黒い涙
光の中にポトリと落ちた瞬間
水面がぶくぶく泡立ち始めた
男の目の前に現れたのは
真っ赤な色のおとぼけ顔
みどりのおびれ 黒いひれ
お日様色した黄色のからだの
おおきな おおきな ふな
ふなは言った
わたしを今すぐ
病気の息子に食べさせなさい
男はおどろいた しかし
神のおくりものと信じた
ふなを抱えてうちへと走る
苦しむ我が子にすぐさまに
ふなを食べさせた
するとみるみるうちに
息子は元気になった
男は泣きながら
いとしい我が子を抱きしめた
ふと思った あの老婆にも
この ふなのことを教えてやりたい
男はまちじゅう探し回ったが
ついに老婆は見つからなかった
黄色のふなも それきり とれなかった
男はハリコで黄ぶなを作り
軒先につるして
老婆の息子のやまいの治癒を願った
まわりの家もそれをまねたのか
いつしか まちじゅうの軒先に
黄ぶなのハリコがつるされた
次第に はやりやまいは消えて行った
未知なるものを人は恐れる
これまで大事に守り抜いてきた
当たり前という安らぎを
うばわれる恐怖 しかし時に
未知なるものに 人は追いすがる
愛しき者を守るがために
生きるがために おびえながらも
希望と信じて 強く抱きしめる
無病息災 願って今も
宇都宮では ハリコの黄ぶなが
飾られている まちを見つめてる
希望と信じて そっと抱きしめる
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